動物を好きだって?本当?

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動物を好きだって?本当?

世の中を見渡すと動物のために何かをしたいという人々が増えているようです。
これ自体は実にめでたいことでしょう。
でも「殺処分0」や「保護犬、保護猫」などという言葉を耳にすると最近私は若干「キレそう」になってしまいます。
誤解しないでいただきたいのは、私自身今まで動物をお金で購入したことはほとんどありません。
モルモットを数匹、ウサギを一羽程度です。
動物飼育歴を自分で覚えている限り(幼稚園ごろから)ざっと数えてみると一時預かりをのぞいて犬だけでも24頭です。
すべて引き取りで、すべて家庭犬として犬舎ではなく家の中での飼育です。
中には、看取るために引き取ったためにわずか「2か月の家庭犬」という子もいました。
別に自慢しているわけでも自分が偉いと言っているわけでもありません。
ただ、犬猫の福祉を守ろうということを自分も実践してきたものであることを言いたいだけです。
しかし、その中で私が何を彼らに教えてもらったかというと、それは視野を広げるということです。
「僕たちと同じ動物たちすべてに目を向けてほしい」というメッセージを私は彼らから受け取ってきたのであると思っています。

今私の家には犬が大小2頭、そして1歳になったばかりの若いウサギと25歳のアカミミガメと17歳の老猫がいます。
皆それぞれ事情があってうちに来た子たちばかりです。
彼らの保護者として日ごろからできる限り頑張っています。
仕事に追われる毎日ですが、ペットシッターさんや家族の手を借りて幸せな生活を送らせてあげていると思います。
犬たちの食事は全て手作りです。
私がいないときにでも手料理が食べられるように一食ずつ冷凍してあります。
でも私は「保護犬」という言葉は使いません。
保護された、救われた不幸な犬たち、そのような言葉で彼らを語るのは失礼であると思うからです。
彼らは全て私のところに来る定めを持った者たちであり、私は逆に彼らに選ばれた人間であると感じています。

まだ学生のころ私は横浜の実家に暮らしていました。
そのとき母がご近所の方々とあたりを放浪していた大きな野良犬を保護しました。
家の門の中に入れ、フードと水を置き門を少し開けたままにして彼女がうちに居ついてくれそうかどうか様子を見ることにしたのです。
しばらくしたら犬はいなくなっていました。
どこか別の場所に隠れ家でもあるのか、通報するべきか等々と考えていたのですが、翌朝庭を見ると何と彼女が3匹の子犬を連れて座っていました。
「お宅は良さそうだから子どもを連れてお世話になろうと思います。」という声が聞こえた気がしました。
その時に私は選ばれるというのはこういうことかと思ったのです。

体験談に没頭してしまう前に本題に話を戻しましょう。
このような彼等との関係の中で先に触れた「広い視野」というものに気付いたことが私の世界観を変えてしまったのです。
彼らの言うとおりに犬や猫というペットたちから少しだけでも目をずらしていくと本当に多くの動物たちの姿が見えてくるのです。
ペットたちよりはるかに多くの動物たちがいかに社会に忘れられているか、そしていかに多くの動物好きという人々がそのような動物たちの姿を見ることのない、考えることのない日常を過ごしているかがどうしようもなく気になってくるのです。

最近の話題の中にもそのような事例がたくさんあります。
例えば、井の頭のゾウのはな子さんです。
ゾウは自然の中で一日何キロも移動を繰り返す動物です。
彼らは群れをつくり仲間と一生を過ごす動物です。
アジアゾウは母系の群れを主として作り、母、祖母、叔母等々が集まり十数頭の大家族で川で水浴びをしたり森林を歩いたりしながら仲良く生活をするのです。
ご存知の方もおられるでしょうが、ゾウは泳ぎます。
水浴びではなく深い水の中に入り本当に泳ぐのです。
で。。。。はな子は?
人間で言えば四角い四畳半の部屋に生涯閉じ込められ、泳ぐことも森の中を歩くことも許されず、そのうえ土を踏むという基本的な自然体験をすることさえできずに死んでいったのです。
そして、それに加えさらし者にされ人目を避ける静かな一時さえ与えてもらうことがありませんでした。
これが人間であったらどうでしょう?
到底耐えられるものであはりません。
心がやんでしまうでしょう。
体調を崩してしまうでしょう。
もしかしたら、自ら命を絶ちたいとさえ考えてしまうかもしれません。
でも、報道の中での地域住民の声にはこのようなはな子の境遇に対する理解は全く感じられませんでした。

「私たちははな子を愛しているのです!」
「はな子をどこかに連れていかれたら悲しい!」
「子供たちがはな子を見て育っています、皆はな子が大好きです!」

これらの言葉にため息が出てしまう思いであったのは私だけでしょうか?
大好きだと?? 愛しているだと??
はな子が苦しい思いをしていることを無視して愛しているなどという言葉を口にできるその神経が全く分かりません。
何十年もの間彼女は本当に悲しい、苦しい生活を強いられてきたのです。
もちろん、飼育係の方々は一生懸命にお世話をしていたことと思います。
でも、どのように頑張っていたとしてもはな子が最も欲するものを与えてやることは誰にもできなかったのです。
美味しい食事、お世話係のやさしさ、どれも否定するつもりはありません。
でも、独房に入れられ、一生そこから出してもらえない状況に置かれた人間にとっては美味しいものは本当の慰めになるでしょうか?
日々の世話をしてくれる人が言葉も通じない自分と全く異なる生活感を持った異星人であったら、その者たちとの接触だけで満たされるでしょうか?

これははな子だけの話ではありません。
動物園の中で行ったり来たりという常同行動を繰り返すクマ、
炎天下でよれよれになっている触れ合い広場のウサギたち、
闘犬で血だらけになっている犬たち、
一羽当たりB5判ノート一枚に匹敵する床面積のバタリーケージの中で必死に卵を産む鶏たち、
彼らのことを動物の福祉という目で見たこと、考えたことはありますか?
日本という小国は世界全体で展示されている約2000頭の海洋哺乳類(シャチやイルカ)のうち500頭を国内においています。
この小国の動物園の数は世界第三位です。
フォアグラやフカヒレなど多くの国々では「虐待食物」と言われているものに対するメディアでの扱いはまだタレントさんたちを起用した「グルメ番組」の域を超えてはいません。
それらの食べ物を食べることが悪いと言っているのではなく、国民の動物に対する意識や世界の動向に対する認識があまりにも低すぎると言いたいのです。
知識を持てば懸命な判断を人間はするはずです。
白熊にとっての最適な温度がマイナス40度から10度であることが分かっていれば、暑い環境で彼らを飼育することに疑問を持つでしょう。
バタリーケージの実態を知っていれば数百円高くても平飼い、放し飼いの鶏卵を買うでしょう。
テレビのコマーシャルに登場する動物を見た時に単に可愛いというだけでなく
「あの子犬はいったい何週齢なのであろうか?」
「あのように小さな子犬をCMなどでいじくりまわしても大丈夫なのであろうか?」
と考えられる人々をどのようにして増やせばよいのでしょう?
「悪徳ブリーダーの無責任さ」という言葉は聞き飽きました。
でも、彼らが大量生産するのは「CMに出ていたあの可愛い子犬がほしい!」という消費者が大量に出現するからなのです。
動物愛護、福祉を唱えている人々はむしろそちらのほうを攻めるべきではないでしょうか?
さらには動物園以外で一般に飼育されている野生動物の境遇は?
猛禽類カフェ?爬虫類カフェ?
これらの動物たちは本当に大勢の人に見られ触られることを苦痛に思っているに違いありません。
動物福祉を語るのであれば社会全体を見渡し、分け隔てなくあらゆる動物たちの代弁者になっていかなければならないのです。
そこから特定の活動に身をとおじることは必要でしょうが、全体像を理解することなく近視眼的に福祉を語ることはできないはずです。
化粧品業界の動物実験は必要か?毛皮を着ることは必要か?
まだまだ自問自答しなければならないことは沢山あります。

人と動物の素晴らしい関係と言われる分野でも問題がないわけではありません。
アニマルセラピーという言葉を本当に気軽に使ってよいものか?
今、動物介在療法や活動などの実践者や研究者たちが最も多く集まる国際会議IAHAIOにおいては活動動物の福祉が大きな課題とされています。
福祉の配慮がなければそのようなことをやっても意味がないと言われているのです。
身体障がい者補助犬の世界でも決して心温まる話ばかりではありません。
働く犬の福祉が守られるのは当然のことであり社会はどのような活動を支えるべきかをより厳しく査定する能力を持っていなければなりません。

始めに言ったように私は決して犬や猫の保護に否定的ではありません。
しかし0処分を言う言葉があまりにも独り歩きをし、それがオリンピックなどとつなげられ「目標」とまでされることに違和感を感じているのです。
オリンピックまでに動物の扱いを誇れる国にしようというのであれば、それ以外のところで「恥ずかしい」ところが本当に沢山あるのです。
最近も関西のある動物園の動画が海外で流れ批判の対象にされています。
大勢の外国人がやってくるのであるから「頑張って良くしよう!!」というのであれば、ぜひ動物関係者の皆さんはもう少し視野を広げてください。
そして、もっと勉強をしてください。
この分野にかかわり始めてから30年たった今でも勉強が足りないなと思わされることが多々ある今日この頃、私も日々頑張っています。

山﨑 恵子

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