ボヤキ・パート3

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ボヤキ・パート3

現在私は環境省中央環境審議会動物愛護部会の審議に加わらせていただいています。
もうすぐ我が国の動物愛護法の改正が実施されるはずですがどうもその方向性に違和感を抱いています。
最近メディアでは同法の課題として与野党がマイクロチップの義務化を検討していると報道されていますが、日本の動物福祉の最も大きな課題であるペット以外の動物の扱いが多方面で全く無視されていると感じるところです。
幼齢動物を販売することの規制、いわゆる8週齢問題、及び犬猫のマイクロチップの義務化、この二つの課題が愛護部会、国会議員の勉強会等々でしばしば大々的に取り上げられているのです。
しかし実は世界の動物福祉の動向からみると産業動物の福祉、動物実験の在り方、そして展示動物の適正飼養が最も注目されている3分野なのです。
言うまでもなくそのどの分野においても日本は先進国の他の仲間たちより意識も物理的システムも遅れているのです。
反対にペット動物の殺処分率に関しては日本は世界的に見ても非常に好成績を上げています。
むろん幼齢動物の販売をより真剣に検討していく事は必要でしょう。
またマイクロチップは確かにペットの安全を守るためには有効な手段であることは否定できません。
しかしその二つに改正の的を絞り、それがあたかも殺処分ゼロへの道のりであると主張することにはやや疑問を感じます。さらにはペット業者に対して飼養管理体制に数値基準を設けるべき、という声も大きくなっています。

動物があまり幼い時期に母親から引き離され販売されてしまうと後に行動上の問題を起こしやすく、結果として飼育放棄される確率も高くなる、という理論は間違っているとは思いません。
しかし例えば犬の状況を考えれば大型犬、小型犬、飼育環境、繁殖・飼育者等々様々な「変数」がかかわる「方程式」がそこにはあるわけです。
答えは一つではありません。
8週齢にこだわるよりも繁殖のルールをより厳しくする方が現実的なのではないでしょうか?
動物の頭数と管理する職員の数の比率、母親の連続繁殖回数の規制、健康管理手順の設定、犬の場合の畜犬登録実施の厳密な確認、衛生管理の現状の抜き打ち査察の実施等々の項目を作り上げることの方が実践的であり、本当の適正飼養管理を法の下で実施することを可能にするでしょう。
言うまでもなくこのような法改正には当然予算を付けることも考えなければなりません。
今のままの状態では査察を抜き打ちでやること自体不可能であるとしか言いようがないのです。
どう考えても担当職員の数が足りないのが現状なのです。
ただしこのようなルール作りができれば簡単に繁殖をし動物を売ることはできなくなります。
本当に良い個体を作ることを目的としている真のブリーダーしか残らないかもしれません。
でもそのような事態になれば8週齢問題はなくなるでしょう。
自分が繁殖している動物種に関する知識や思いがしっかりしている人ばかり残れば「出す時期」は皆それなりにベストな状況を考えるからです。
またこのような繁殖業のルール作りは犬や猫だけではなく今第三のペットとして人気を集めているウサギなどにも当てはめることができます。
小動物の大量生産にはまだ目が向けられていませんがウサギの繁殖場などに関する「恐ろしい情報」なども出てきている今、そのようなところにも目を向ける必要があるのです。

マイクロチップに関する問題点は沢山あります。
先日も与党が犬猫のマイクロチップの義務化を検討することが報道されていましたが、まず犬に関しては畜犬登録という国の制度があります。
これは狂犬病予防法(厚生労働省)に基づいたものであり犬を飼育する国民は全てこれを行う義務を課せられているのです。
むろん罰則規定もあります。
では飼い主全てがこれをやっているのでしょうか?
答えは「ノー」です。
はっきりとした数字は出ていませんが7割を下回っているのでは、という声も聞こえてきます。
正式な登録犬の数と業界データに基づいて算出される国内飼育頭数の間にはどうやら大きな差が出ているようです。
法的義務であるにもかかわらずこのような状況が存在し、かつ、法に従っていない者に対する制裁措置がしっかりと実施されているという話もあまり聞きません。
一つの制度の下でやらなければならない事をできない飼い主がこれほどいる中でさらに新たな義務を課しても本当にそれを飼い主たちに強制することはできるのでしょうか?
また特に犬の飼い主の視点に立って考えると二重の登録を強いられることになります。
このような負担を飼い主たちはどう受け止めるのでしょう?
確かに我々人間は社会生活の中で住民登録、国保、年金等々色々な理由で多重の登録業務を強いられます。
しかしそれは様々な恩恵を受けるためのものなのです。
マイクロチップを入れたら動物には何か特典が与えられるのでしょうか?
災害時にはどの避難所でも受け入れてもらえるとか?
また義務化したとしたら誰が確認を行い、違反者はどのように摘発するのでしょうか?
それがなされないのであれば義務と言われても誰もあえて入れないでしょう。
それに加えチップ情報の管理が一元化さえていない現状においてその問題はどのように解決するのでしょうか?
登録機関が複数ある中で混乱は起こらないのでしょうか?
また登録機関の中には民間企業もあります。
仮にその企業が倒産したら、または経営権が他社に渡ったら保有されているデータはどのようなことになってしまうのでしょう?
このような様々な課題をクリアしない限りマイクロチップの義務化は難しいのではと感じる次第です。
この課題に関して畜犬登録という制度を持っている厚生労働省の確固たる立場表明がないような気もしますが。。。。何故??

数値基準という点に関して一言。
例えば犬であれば100キロ近い個体から1.5キロしかない個体までいます。
その一つ一つに囲いの大きさの数値基準を作るのですか??
それよりも体を基本として、立った際に頭が天井に触れない、四肢を伸ばして横たわった時に足先がつっかえない、方向転換が容易にできる等々の基準を作ったほうが合理的ではないでしょうか。
現在動物との共生を考える連絡会のサイトにはこのような基準のサンプルが掲載さえています。
これに加え保管用のケージに収容する時間に制限を設けることも必要でしょう。
そこから外に出し場所を変えて運動をさせることを必須とするわけです。
英国のウサギの管理基準の中のケージの大きさはウサギが3回、ピョンピョンピョン、と移動できる大きさ、(3 hops)、と明記されています。
言い換えれば数値基準とはきわめて非現実的なものでありむしろ動物の個体を基準としてどのような動きができるかできないか、をベースに基準が作られるべきなのでしょう。
私は何度も、そして連絡会も何度もそのことを声に出して言っているのですが行政も、業界も全く聞こえないようです。

と。ここまで私もペットのことを書いてしまいましたが実はペットたちが置かれた状況に関してはすでにトンネルの向こうに光が見えてきています。
むしろ全く注目してもらえない動物たちにこそ愛護法が手を差し伸べるべきなのです。
最近ようやく福祉を重んじた飼育方法で生産される畜産物の話題がメディアに取り上げられるようになってはいますが、まだまだ国民の目はそこに向けられてはいません。
しかし欧米では着実に畜産における動物福祉が注目されるようになっており関連商品の売り上げも伸びています。
さらには生産現場に対する法規制も着々と進んでいるのです。
それに加えネスレやマクドナルドなどの大手企業が「倫理的食材」を仕入れるという宣言をし始めていることにも着目しなければなりません。
日本ではまず消費者教育が必要でしょうがメディアがなかなかそれをやってくれません。
大手の新聞社などは「思想」的な広告を載せることを拒否するようであり大金を積んで見開き広告で消費者にメッセージを届けようとしてもできません(もちろんそんな大金はありませんがね。。。)

ペット業者に飼養管理基準を設けるのであれば少なくとも畜産業者、動物園、そして実験動物飼育者たちにも同じようにルールを作ることがフェアではないでしょうか。
同じ命であり動物愛護を推進するための法律であればペット以外の動物たちをも守る内容にしていかなければならないのです。
2020のオリンピックに来日する外国の方々は日本のペットの現状や殺処分数などを取り上げることはないでしょう。
むしろ選手村で出される食事に用いられる動物由来の食材の出どころ、観光で訪れる動物園の現状等々に目を向けるのです。
また動物実験、実験動物の管理方法などに関する法律がしっかりと制定されていない国がはたして先進国と言えるのであろうか、OECDメンバーとして動物実験代替法の開発の予算が非常に貧相であるという点は恥ずかしいことではないのか?このような疑問を行政も国会議員も、そして国民も決して無視することはできないのです。

最近吠えても吠えてもこのような現状が国会議員に伝わらないことに憤りを感じています。
自分でまとめてみてみても決してわかりにくいことを言っているとは思えないのですがいかがでしょう?
愛護法が議員立法である限り彼らの関心をひきつけなければならないのです。(溜息)

動物との共生を考える連絡会は最近「お手紙キャンペーン」を開始しました。
ホームページを見ていただくと議員に送る手紙のひながたがあります、議員一覧へのリンクも付けています。
「標」を有する地元民からの声を上げるしかないと考えこのようなキャンペーンを始めました。どうかご協力ください!

山﨑 恵子

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